神のロジック 人間(ひと)のマジック

神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)

神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)


評価:7/10点
西澤保彦氏のノンシリーズミステリ長編。実はノンシリーズで真っ当なミステリは久々な気が。といっても氏の作品なので正当派なミステリでは無いのですが。内容としては所謂クローズドサークルもの。
アマゾンの紹介文を引用すると、

ここはどこ? 何のために? 誰によって? 荒野のただ中にある謎の「学校」に、犯人当ての実習で幽閉された6人の子供たちが立ち上がった。待ち受ける試練。驚愕の企み。そして1人の新入生が登場し…。

こんな感じですが、中盤まではそこまで緊迫していません。まぁ、逆に言うと中盤から急展開するのですが・・・。


以下感想(一応ネタバレなしですが、先入観を持ちたくない方は読まない方が良いかも知れません・・・)。
テーマは、英題そのままと言えるかも知れません。「Logic of God is Magic of Human」、つまり、神の論理は人の幻想である、と。
神=信仰とは、所詮人が作り出したものであり、人があると言えばあるし、無いと言えば無くなってしまうような、不安定で儚いものである、と。
しかし、それは逆説的に言えば、神が幻想であるならば、それを信じる限り滅ぶ事のない完全な存在たり得る、のではないでしょうか。
人間にとって「世界」とは、事実として存在するものではなく、それを真実として信じる事で構築されるものである、というのは近年よく見られるテーマです。
今作では(ある意味)よりストレートに、人間の妄念が生み出すものとしての「世界」、をテーマとして描いています。
そんな中で、「異教徒」という言葉が非常に印象に残っています。
違う価値観の間の闘争と、宗教闘争は非常によく似ているな、と*1


・・・いまいちまとまらないですが、氏の近作の低調ぶり(失礼)に較べるとかなりお勧め出来る作品です。氏にはあんまりフェミどっぷりな作品ばかりじゃなくてこういうストレートに「痛い」作品も、もっと書いて欲しいんですけどね・・・。

*1:集合論的には寧ろ宗教闘争が価値観闘争の一部な訳だが。