感想:湊かなえ「告白」

相変わらずひどい更新頻度ですがたまには本の感想でも。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)


評価:8/10点
本屋大賞受賞等でだいぶ話題になった本書。ずっと読みたいと思っていたところ、頃よく借りて読むことが出来ました。
Amazon等のレビューではかなり極端な形で賛否両論のようですが、「こんな残酷な話、絶対に子供に読ませたくない!」と星1つをつける人は流石にナイーブすぎるのではないかと(苦笑)。


本書は全6章、計5人の「独白」を基に話が進行する訳ですが、登場する人物のことごとくが独善的な人間に仕上がっています。「言葉にすれば嘘になる」とはいいますが、基本的に「独白」なんてものは自分への言い訳の為にするようなもので、傍から聞いている/読んでいると薄っぺらく感じるもの。ましてや、その自意識の発露やプライドの拠り所が作中の他人から見れば糞の役にも立たないものであると(読者に対しても)暴露されてしまう様は、ある意味作品の白眉たる所かと。
「人物描写にリアリティが無い」という批判も散見されますが、リアリティ豊かな「自分語り」なんてもんはそれこそ幻想で、そこいらにあふれるブログやらつぶやきやらの文章を見れば如何に人の「告白」が薄っぺらく、痛々しい、テンプレート的でベタなものか知れようというもの(というのは自戒を込めて)。
ミステリ的にも一人称語りを巧く利用しており、十分満足出来る内容です。ただ、本書の見所はやはり「自意識と客観評価のギャップ」の描き方の巧さでしょう。ミステリ読みならば一人称語りといえばまず叙述トリックを疑うものですが、ミステリ的なネタよりも、そちらの方でより一人称語りが機能しています。
少々本書の瑕疵をあげるならば、ラストの強引さでしょうか。お前どうやってそれやったんだよ、という種明かしと、状況の想像しづらい長い独演は少し無理があったかな、と(苦笑)。
とりあえず映画版も評判が良いのでDVD等で近々観てみたいと思います。
良い話が読みたい人には全く薦められませんが、読後に嫌な気分になりたい人はおすすめです。自分が読後に思い出したのが麻耶雄嵩氏の諸作品。大概自意識が過剰に肥大した人間の屑ばかりが出る読後感の非常に悪い作品ばかりですが、それに通ずるものがあるなあ、と。