感想:中田永一著「百瀬、こっちを向いて。」

評価:7/10点

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)


知らない作家でしたが、書店で平積みになっているポップに「実は○○が書いている?」みたいな事が書いてあり、その○○氏のファンだったので思わず手に取り購入。

とてもリーダビリティの高い本でした。多分3時間かからず一気に読めました。
基本的に「日陰者の恋愛」が各短編の通底にテーマとしてあるのですが、そういう小説に良くある陰鬱さとか周囲の人の悪意があまり全面になく、それなりにドライな語り口でさらっと読むことが出来ました。
ドラマチックな展開や大上段なテーマはなく、日常の延長線上にあるような細かなエピソードの積み重ねで人間関係を描く佳作、といった感じ。
ふと軽めな恋愛小説を読みたい、と思った時に手を伸ばすには良い作品なのではないでしょうか。
しかし、この作家一応覆面作家という位置づけなんですが、なんというかバレバレですね(苦笑)。普通に本来の筆名で書けばいいのに、と思いつつ、本来の筆名に定着してしまった色が付くのが嫌だったんだろうか、とも思ったり。白○○とか、黒○○とか、良くも悪くもイメージが固定化されてるからなあ・・・。
早い所本来の筆名でも作品を出して欲しい所ですが、てっきり作品を全然書いていないと思っていたので、こういう形でも作品を読めるならまあ良いかな、と(苦笑)。