鴉
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1999/04
- メディア: 新書
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評価:7/10点
以前書いたとおり、やっと下関の古本屋で見つけた麻耶氏の「鴉」、やっと読了しました。
何故こんなに時間が掛かったかというと、珍しく再読していたからです。いつも通りもう見事に騙されました。
以下感想。ネタバレは隠しますが、先入観を持ちたくない方は読まない事を推奨します。
- 五行思想について
今回初めて土用の意味を知りました(汗)。麻耶氏にしては文章も読みやすく*1、用語の説明的な文章でもうんざりせずにちゃんと読むことが出来ました。
そしてこれが(見かけ上の)メイントリックにつながっていくのですが、その使い方が本当に見事。「紅葉」をきっかけに全てが繋がる、というのは映像的にも鮮烈です。
- 神について
麻耶氏の作品では「神」をテーマにしたものが非常に多いですが、ここでも前近代的で閉鎖空間(隔離された村落)での「現人神」のあり方をテーマにしています。読んでいて連想したのが「天皇機関説」。
- (隠された)メイントリックについて
もう見事に騙されました。最終章でのメルカトルによる真相を読んだとき、完全にえ?となってしまいました。「複数視点は叙述トリックを疑え」ってことで途中で「櫻花と橘花は別の時代の話ではないか」と思ったのですが、途中でその可能性を捨ててしまいました。まさか「櫻花と橘花は兄弟ではなく赤の他人」だったとは・・・。完全にやられました*2。最初真相を読んだ時も、あまりの意外さに意味が分からない位でした。そして更に再読時にその巧妙さに驚きました。
てな感じでございます。散々驚かされた割には評価がそこまで高くないのは中盤ダレて、犯人当てを途中で放棄してしまったから、ですかね。見かけ上のトリックにもっと釣られていれば、本命のメイントリックの衝撃ももっと大きかったのでしょうが。もう少しスリムにまとまっていれば最高でした。しかしそれを差し引いてもこれは秀作です。お勧め。