子どもの王様

子どもの王様 (ミステリーランド)

子どもの王様 (ミステリーランド)


評価:6/10点
講談社のミステリーランドの殊能氏の作品を古本屋で購入。本当は高いから文庫落ちしたら買おうと思っていんですけどね・・・。3年経っても出ないから思わず購入してしまいました。てか講談社は文庫にする気なさそうですね・・・。麻耶さんのも今の内に探しておかないと入手困難になりそうな悪寒。
以下感想。
児童書に近いコンセプトの為、ミステリとしては非常に直球。「これは伏線ですよ」という著者の意図が見えるほど、(大人にとっては)わかりやすく書いてます。ミステリ入門書として子どもに読ませるには中々良いのではないのでしょうか。
かといって大人が読んで退屈かというとそうでもなく、小学生の主人公が固定化・システム化されたいじめの構図等を諦めながらも非常にシニカルに見ていて、色々と考えさせられます。大人の社会の矛盾を子どもの視点でシニカルに見る、という点では微妙に毒も混じりながら非常に巧く描写されていると思います。まぁ、こんな大人びた思考の小学生がいるのか?とも少し思いますが(苦笑)。
テーマは「ヒーローはいない」「合理的解決はない」「だが絶望しない」*1といった所でしょうか。
また、細部で言及するなら母子家庭の主人公と母親の関係が何か良いな、と思ったり。子どもに「お母さん」ではなく名前で呼ばせる、ってのに何か憧れます*2。社会関係上の役割ではなく、個人の人格を尊重してる様な気がするんですよね。
全体的にはこれぞ!といったポイントは無いですが、安定した佳作、といったところでしょうか。

*1:オーフェンの名台詞「神はいない」「人は自立しない」「だが絶望しない」を改変。

*2:フルーツバスケットの主人公の家庭もそうですね。