川上信者による感想:「アクセル・ワールド1」

評価:6/10点

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)


電撃文庫の大賞受賞作、川原礫著「アクセル・ワールド」1巻読了。
既にウェブ上で評価を得ている方のようで、文章力は標準的なライトノベルの水準を上回っているように思います。デビュー作を読む際に感じがちな文章上の違和感をほとんど感じる事なく、一気に読む事が出来ました。
「いじめられっ子が異能力を手に入れて状況を打開」+「ボーイミーツガール」というプロットは非常にベタなのですが、寧ろ最近はポスト・ポストモダン的というか、ぐるりと一周回って近代に回帰したような作品が流行りなのを考えれば、そういう物かなあ、なんて思ったり。
惜しむらくは設定活用の浅さ。これはまあ、川上信者な自分だけかも知れませんが。せっかく「限りなくリアルな仮想空間でロボット格闘ゲーム」という応用が最大限利く舞台設定なのだから、インパクトのある「奇想」を展開して欲しかったところ。ジョジョに始まり、ブギーポップ、ワンピース、etcetc...と近年能力バトル物が百花繚乱な中で同じ土俵に殴り込むのは無謀かも知れませんが、そこは敢えて挑戦して欲しかったなあ、と。
とりあえず、せっかく「近接直接攻撃」「遠距離直接攻撃」「間接攻撃」の3すくみを設定しておきながら出てくるキャラ全員が近間で殴り合う、ってのはどうなのよ、と(苦笑)。その辺りのバトル物としての拡がりは次巻以降に期待、という事で良いのでしょうか・・・。
そういう意味で、川上稔氏の誰が得するか解らない(苦笑)解説兼短編小説は非常に示唆的。「世界観」ががらりと変わるならば、その世界に立脚する「日常」もまたそれに併せた形で色々とと変わらないとおかしいよなあ、と。「矛盾都市TOKYO」なんか特にそうですが、川上氏の作品はその偏執的に重厚な設定構築もさることながら、その上に拡がる日常の描写も案外きちんと描いてるんですよね。


てな感じであんまり褒めてませんが(苦笑)、総合的にはそれなりに「読める」佳作だと思います。シリーズとしての評価は次巻以降を見てから、と言ったところ。
後はもう少し対象年齢高めな感じの作品も読んでみたいかな、と。次作予定の作品紹介(別シリーズ)を読むともうちょっとハードっぽいのでそれに期待。二十歳過ぎたおっさんにはスクールカーストとか若干食傷気味なので・・・(苦笑)。