感想:ベンジャミン・バトン 数奇な人生

評価:8/10点
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「ベンジャミン・バトン数奇な人生」を鑑賞。アカデミー賞最有力候補でしたが、見事に落選してしまい非常に残念。でも良い映画だったと思います。
「80歳の姿で生まれ、若返りながら歳を重ね、新生児の姿で死ぬ男」というSFのような、ファンタジーのような設定を元に、ベンジャミン・バトンと、それに関わる様々な人々の人生を描いています。
2時間47分と非常に長尺な映画でしたが、間延びすることなく、楽しむ事が出来ました。
「歳を取る程若返る」ベンジャミンの特異な生と対比するのは、絶対的で普遍的な死。特異な容貌で生まれたが故に、ベンジャミンは養老院で育ち、老人達の「お別れ」を見ていきます。そして養老院を出た後も、様々な人々の死と様々な人生に触れながら、出会いと別れを繰り返しながら、成長していきます。
養老院での老衰。戦場での戦死。多くのありふれた、普遍的な死と別れから浮き上がるのは代替不可能な生。「会うたびに雷に当たった話をする」とか、「船乗りなのに自称芸術家」とか、そんな言葉で表現しようとすればなんでもないようなエピソードの積み重ねが、その人を形作り、かけがえのない、一言で言い表せない存在となる。そんな事を思いました。
奇抜な設定の割に核となる大きなエピソードもなく、プロットからの駆動力が低い代わりに、非常に演出が巧い映画です。だからこそ長尺な映画でもダレる事なく楽しめるのかな、と。細かいエピソードを丁寧に積み重ねたからこそ、最後のシーンが活きる。基本的な表現の手法ですが、きっちと決めるのは非常に難しい。非常にしっかりとした王道な映画でした。