WALL・E/ウォーリー

評価:8/10点

年明け一発目の鑑賞映画。非常に良作な映画でした。
所謂ロボット同士のボーイ・ミーツ・ガールと言う事でプロット自体はベタですが、演出の巧さが際だっています。
CGの表現力が格段に上がっていて、荒廃した地球を表現するCGの情報量の多さは正に圧巻の一言。
CG表現の対比、と言う事で言えば荒廃した地球とそこで暮らすウォーリーは非常に精細に表現されているのに対し、宇宙船やそこに住む人間達はのっぺりとしたCGで表現されている、と言う事でリアルとアンリアルの対立構造、というのも表現されているのかな、と。
様々な過去のSF作品のパロディがちりばめられていたり、ウォーリーの太陽光による充電が完了するとマッキントッシュの起動音が流れる、といった細かな演出は流石。ベタなプロットと細かな演出の併せ技で間口は広く、奥行きは深くする事に成功しています。
公開から大分経っていますが、大人も子供も楽しめる、良作に仕上がっています。お勧め。


蛇足ですがミステリ作家の殊能将之氏の感想を以下引用(ネタバレ注意)。

「ウォーリー」ってディストピア映画なのかね?
 巨大ショッピングモールのなかでカウチポテトしながら一生暮らせるなら、楽でいいじゃないの。
 わたしは「こういう安楽な生活をしてるやつにかぎって『人間は大地と触れあわなければならない!』とか言いだすんだよな、できもしないくせに」と思ったよ。少なくとも要塞みたいな社屋にこもり、CGつくって儲けてる連中に言われたくないよ。

 荒廃した地球を緑の楽園に開拓するためには、途中でアキシオム号の乗客は半分くらい死んじゃうと思うよ。
 あ、そうか。開拓はロボットがやってくれるわけだ。人間は最初ちょこっと鍬を入れるだけであとは寝て暮らし、ロボットが育てた作物を手にして「農業はすばらしい!」と言うわけね。それ、カウチポテトとどこがちがうんだよ。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/mercysnow/LinkDiary/index.html

おそらくものすごい数の人間がこの騒動の裏で死んでると思うのですが(多分地球に帰還する前の段階で既にイブのビームや圧死で相当数の人間が死んでるのでは)、人間をのっぺりとしたCGで描く事でその辺りを綺麗に隠蔽したのかな、なんて思いました。リアルなウォーリーの部品はガタガタに壊れていくけど、CG然とした人間が死んだりけがしたりするシーンはない、と。それが確信犯なのか天然なのかは微妙な所ですが。