感想:ラースと、その彼女

評価:8/10点
ラースと、その彼女」を公開2日目に渋谷で鑑賞。とても良い映画でした。
lars-movie.com
人付き合いの苦手な青年がリアルドール(所謂ダッチワイフ)を買ってくる事から田舎町で騒動が起こる、というプロットはそれだけ聞くと大概アレな映画に見えるかも知れませんが、見た目とプロットのインパクトと違い、非常にセンシティブで、優しい映画でした。
これまで地味に生きてきた主人公ラースの突然の奇矯な行動に対して、兄夫婦も、職場の人間も、村の住人も、それぞれが心配しながらも、最終的には彼の行動を受け入れ、彼との関係を再構築していきます。
その周囲の人間の「優しさ」は、ともすればあまりにも現実離れしたファンタジーに見えるかも知れませんが、舞台が田舎町であるが故に、そんな理想郷もあるかもしれない、と思わせる強度は保っていると思います。ただ単に砂糖でまぶしたような甘ったるい、でも本質から目を背けるような「優しさ」ではなく、きちんと互いに向き合うまじめさを登場人物のそれぞれが持っている、と。「大人の童話」という形容詞はあまりにも陳腐で使うのを躊躇ってしまう言い回しですが、正にそんな映画だと思いました。
しかし、一緒に見た人とも議論になったのですが、果たしてラースは何時から「狂気」「正気」になったのでしょうか?自分はリアルドールを買ったときから既に半分は正気だったと思うのですが。どちらにしろ、「狂気と正気」/「リアルとファンタジー」の境目をあやふやにする、という意味で「リアルドールを注文している」シーンを外したのは意図的な演出だったんだろうなあ、と。
ともあれ、冬のアメリカの田舎町を舞台にした非常に綺麗な映画です。ポスターや粗筋だけみてネタ映画扱いするのは勿体ない!所謂大作映画ではないですが、お正月にちょっと観る映画としてはなかなか良いんじゃないかと。是非。お勧めです。