感想:さよなら。いつかわかること

評価:7/10点
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GWの前半に鑑賞。「イラク戦争に従軍していた妻の死」というのが話題の焦点になっており、ともすればベタな感動ものとして消費されてしまいそうな映画ですが、なかなかどうしてしっかりとした作りでした。
粗筋は以下のとおり。

ホームセンターで働くスタンレーは、二人の女の子の父親。母親は陸軍軍曹として、イラクに赴任中だった。長女のハイディは、父親のいない時に、こっそり戦争のニュースを見ていた。スタンレーは、母親を恋しがる娘たちとうまく接することが出来ず、いつもぎこちなく食卓を囲んでいた。ある日、妻が亡くなったという報せが届く。突然の妻の死を伝えることが出来ないスタンレーは、娘たちと小旅行に出かけることを思いつく…。
(goo映画より引用)

以下感想。
カメラワークが拙かったり、舞台がほぼ自宅と車中だったりと低予算な雰囲気は否めませんが、役者陣の好演がそのマイナスを十分に補っています。特に姉妹役の2人は非常に良い演技をしています。
また、主人公の父親を演じるジョン・キューザックが非常に良いです。もう見事に普通のおっちゃんなんですが、これまで厳しく接して来たが故に娘達と全然巧くコミュニケーションとれない男親の苦悩とか、旅行中の態度があんまりにも不自然で姉に「お父さん、リストラされちゃったの?」と本気で心配されちゃったりとか、全然違和感が無いんですよね。そして随所随所であまりにも辛くなり過ぎて公衆電話で自宅に掛けて留守電の妻の応答メッセージを聞いてしまうという。その泥臭い感情の動きの自然さに不覚にも泣きそうになってしまいましたよ(苦笑)。
父親は所謂ベタなアメリカ的な愛国者で、その愛国心故にアメリカの正義を信じて軍に志願しながらも、事情により除隊されてしまいます。本来自分が征く事を望んだ筈の戦場に妻が行き、そして戦死する。この戦争が「正義の戦争」だと信じて妻を送り出した自己を否定するような事態と、母の死を娘達に説明しなければならない事の困難さ。「夫として」「父として」の2つの苦悩を描く事で、単純に「戦争に征く男とそれを待つ女」というプロットの男女の立場を逆転するにとどまらず、立場が逆転する事で浮き彫りになる「ずれ」を見事に描いています。
という感じできっちり泣き所を押さえながら、単なる感動映画の枠にとどまらない良作です。クリント・イーストウッド手掛ける音楽も良質なだけでなく、演出と相俟って効果的に機能しています。GWは過ぎてしまいましたが、東京でも今月一杯位は上映している様なので是非、「感動映画」が苦手な方にもお勧めです。