感想:ダーウィン・アワード

評価;7/10点
年末に観た映画なのでかなり旬を過ぎてますが、せっかくなので感想を書こうと思います。
公式サイト:【映画】ダーウィン・アワード ーThe Darwin Awardsー
実在の賞ダーウィン・アワード。それは、おバカな死に方をした人を「遺伝子を残さなかった事」で人類に貢献したとして表彰する賞。実在のサイトはこちら
本作では、そんなダーウィン賞に取り憑かれた保険調査員が、様々な「ダーウィン賞」的な案件を扱う事で「何故人はこんなおバカな行動を取ってしまうのか」を調査していくうちに、ミイラ取りがミイラになるように深みに嵌っていく様を描いています。
例えば
「高層ビルのガラス張りのオフィスで、強化ガラスの強度を試そうとして体当たり→墜落」
「車に戦闘機のジェットエンジンを搭載→制御不能になり暴走」
等々、予告編をみても一発で解るとおりとびきりにおバカな事例が次々と出てきます。
とにかくバカ映画に徹していて、非常に潔い映画です。キャラクタ造形もなかなか良くできていて、理屈バカで気の利かない主人公と、世間ずれしていて蓮っ葉なヒロイン(ウィノナ・ライダー)のコンビは掛け合いも非常に面白く、効果的に機能していてます。
という感じで至極真っ当(?)なバカ映画なのですが、違う側面から観ると、(特に田舎の)アメリカ社会の負の側面を批評的に描いている点が非常に面白い。
例えば先に挙げた「車にジェットエンジンを積んでしまうバカ」は、片田舎でガソリンスタンドを経営して生計をたてているのですが、やることといったら妻とのセックスか、せいぜい暇つぶしに廃車にライフルぶっ放して遊ぶくらいしか娯楽がない。
そこで退屈な日常を打破する為に軍の横流し品のジェットエンジンを手に入れる訳ですが、その動機が「妻はテレビ出演するような凄い人を見た事がない」→「車にジェットエンジンを載せれば、凄い人としてテレビ出演出来、妻が喜ぶに違いない」というもの。発想のスタートラインが誠実そのものなのに、それ以外がことごとく間違っている、という点で非常に泣けてきます。アメリカの田舎の閉塞感と、文化/情報格差的な偏狭な想像力が端的に描かれていて見事だと思いました。ただ単にバカな事例を挙げるだけでなく、当事者の信条に入り込んで、「魔が差す」瞬間のような、心理的な背景を描く事に成功していると思います。
既に首都圏での公開は終わっていますが、むしろこの作品はレンタルビデオで軽く楽しむ映画だと思います。機会がありましたら、是非。お勧めです。