大学生の論文執筆法
- 作者: 石原千秋
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
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評価:7/10点
先日の「国家の品格」と同時購入。しかし内容は天と地の差。こちらの方が遙かに知的レベルは高いと思いました。
構成としては、
「第一部 秘伝 人生論的論文執筆法」
と
「第二部 線を引くこと――たった一つの方法」
の二部構成になっています。
第一部は論文執筆の実際的なルール説明等は実はメインではなく、大学生(以上)に対する教養入門的な内容になっています。また、そのルール説明的な内容においても、悪い見本としての実例を「希望格差社会」や朝日新聞等を引き合いに出すあたり、罵倒芸というか、プロレス的というか、そういう読み方も出来たりして非常に面白いです。逆に言うと、ここで例に引用されているものは批判される点はあってもどれも論文として強度の高いものが選ばれており、日本の現代思想を知る上でも非常にためになりました。
一方、本当に駄目な言説*1に対しては
知的でない人間は、対話や議論を拒む。「いけないことは理屈ではなく、有無を言わさずいけないと教えなければならない、それが品格というものだ」などという人間に知性は存在しない。こういう知的でない言説が大衆受けするのは、「いけない」ことの内容を自分で勝手に代入して、現在の自分の立場を無反省に正当化できるからにほかならない。これが大衆の保守化である。平成大不況の中で疲れ果て、知的に考えることが面倒になってしまったのだろう。しかし、何度でも繰り返すが、そこには知性はない。
と、具体的な名前を出すまでもない、とばかりに痛烈に批判しています。
そして第二部は、全ての思考の役割として、「線を引くこと」の重要性を説きながら、様々な現代思想の論文を引用し、具体的に解説していきます。
これは、そもそも文化とは他者との境界を作ることであり、その境界が「何故あるのか」「何故そこに引かれているのか」という事に対して常に自覚的で無ければならないという事ではないかと。
色々と考えさせられる本でした。取り敢えず、もっと本を読まなければな、と。