やっぱり復讐はノリノリでやらなきゃね〜♪、という話(違):「スウィーニー・トッド」感想

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」を観てきました。
評価:5/10点
公開からかなり日が経っていて、しかも平日の17:00〜という微妙な時間帯にもかかわらず、それなりに人が入っていました。それも女性が多数。やっぱりジョニーさん効果はすさまじい、という事なのでしょうか。
描写がえぐいと評判だったので観るのを躊躇していたのですが、イン殺さんのこちらの感想↓を見て鑑賞を決意しました。
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(ティム・バートン) - イン殺 - xx
ざっくりとしたあらすじとしては、

舞台は19世紀のロンドン。
美人な奥さんと可愛い赤ちゃんと幸せに暮らしていた理髪師が、妻に横恋慕する好色な判事に目をつけられ、無実の罪で15年間島流しの刑に遭う。
ロンドンに再び戻ってきた理髪師は、商売道具の剃刀片手に復讐を誓う・・・!

と言ったところ。
以下感想。
取りあえず粗筋から考えてもろくな結果にはならんであろうべたべたな悲劇の筈なのですが、この映画のとにかくイカレているところは登場人物の大概が基地害な所。
取りあえずジョニー・デップ演じる主人公のトッドがひたすらノリノリ。なんかいつの間にか一般人サクサク殺ってるし。普通、復讐鬼(あいつをとにかく殺りたい)から殺人鬼(だれでもいいからとにかく殺りたい)へクラスチェンジするには色々と越えるべきものが普通有ると思うのですが、それはもうあっさりと飛び越えてしまいます。そして越えた後も、「あれ?俺何やってるんだろう・・・」的な葛藤も何もなし。
んで協力者のヘレナ・ボナム=カーター演じるラヴェット夫人との掛け合いが何か妙にシュールなんですよね。ラヴェットは「復讐なんかやめて海辺に家買って二人で優雅な老後をすごしましょうよ〜」なんて言ってるのにトッドは「あ〜早く剃刀に血を吸わせてえなぁ」なんて事を言っていて全く会話が成立していないという。ミュージカル形式なので、二人の歌う歌の曲調も一緒で、歌詞も二人で韻を踏んでいるのに想う対象は1ミリたりとも噛み合ってないのが悲哀を通り越してシュール過ぎて笑えてきます。
一方の復讐の対象である判事も相応にイカレていて、取りあえず好色描写がなんともシュール。んで、「今日も一人無実の若者を処刑台にご招待〜」みたいな日常描写(?)があるのですが、行動の動機も無く、ただ取引相手っぽい人と「おぬしも悪よのう・・・」的なカットがあるだけなので悪人と言うより単なる狂人にしか見えないんですよね(苦笑)。
てな感じで、普通復讐劇って主人公側の悲惨な状況やら葛藤やら、復讐される側の非道っぷりが積み重なって初めて復讐のカタルシスが生まれると思うのですが、本作はトッドが観客の感情移入をすっ飛ばしてノリノリで殺りまくってしまうので、全然悲惨な感じがしないんですな。むしろ随所でシュール過ぎて笑える場面が多かったです。当然こんな話でハッピーエンドになるべくもないのですが、バッドエンドになっても「そりゃああんだけノリノリで殺ってたらこうなるだろ、常識的に考えて・・・」と、苦笑するしかないという。
ちなみにえぐいと話題のカットスロート描写ですが、そんなに気になりませんでした。そんなに残酷描写は得意ではないのですが、いきなりざっくり、みたいなサプライズが無かったからかもしれません。
総括としてはまぁ、普通の怪作、と言ったところ。むしろB級映画臭がしました。狂人を描くにしても、もう少し丹念に描くか斜め上に突き抜けてくれないと圧倒されないなぁ、と。
それにしてもジョニー目当てに来た女性の方々はどういう感想を持ったのでしょうか・・・(汗)。ちゃんと興行成績も良いしなぁ。謎だ・・・。