感想:少女には向かない職業

評価:8/10点

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)


少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)


新年一発目の読了小説。桜庭一樹の12月に文庫落ちした作品。ネタバレ無しで以下感想。
見た目と文体がラノベ風味ですが、なかなかどうして味のある作品でした。
巻末の解説で言及されている通り、明記されている・いないに関わらず既存の古典ミステリ作品が多数引用されている、というのはなんとなく読んでいてもわかるのですが、その大部分を未読な為なんだか負けた気分になりました(苦笑)。取り敢えず作中で明確に引用されている作品だけでも読んでおかないとなぁ、と。そういう意味でこの解説は非常に質の高いものだったと思います。単行本で既読の方も是非解説だけでも読んでみてはいかがでしょうか。
ミステリ的には先行作品の明示もあって若干評価が辛くなるのですが、「完全犯罪」の方法を4つ作中で提示している点、そして最後に一番確実な、そして一番駄目な方法でそれを達成している点で、ミステリ小説としても通用するレベルではないかと。
本書の白眉は主人公の少女の心情描写。アル中の義父に殺意を抱く、というプロットは既読本でいうと貴志祐介の「青の炎」とまんま一緒なのですが、本書の方が読んでいて違和感がありませんでした。「青の炎」と本書の差は、「短絡的な自分に気づいていない少年」の気持ち悪さと、「感情的な自分に(メタ的に)自覚しつつもそれを避けられない少女」の気持ちよさなのかなぁ、と。やっぱり少女は少年より早く大人になるものだな、なんて思ったり。
結局のところ殺意を抱いた時点でそれが成就したところで状況としては「詰んでいる」訳で、その壊れていく状況に対していかに少女が抵抗していくか。もろに少女視点の文体は好みが分かれる所ですが、そこは著者のお家芸と言うことで、それがOKな人は十分お勧めです。