感想:狼と香辛料1巻

評価:6/10点
一昨日の日記の通り、見事にアニメ版でやられてしまったので早速3巻まで購入してしまいました。二日でシリーズ3巻一気読みなんて久々だなぁ。
取り敢えず一巻の感想。
表面的には「ケモノ耳娘萌え」が目立つ作品だと思うのですが、なかなかどうして枠組みのしっかりとしたライトノベルでした。散々こういった感想は既出だと思うのですが、ライトノベルで「経済活動」を主題にしたものはかなり珍しい。中世ヨーロッパの、物々交換経済と貨幣経済が斑状に覆う中で「為替の発達」等、現在の経済活動の基礎となる諸取引を丁寧に、しかもストーリー上違和感無く説明しているのは筆力の高さ故、だと素直に思いました。
所謂ボーイミーツガールもの*1なのですが、近年流行な「一般人の男の子が異能の少女と出会い、戦いに巻き込まれる」形でないのも好感触。アクションシーンは最低限に抑えられており、あくまで商行為における心理戦がメインに据えられています。
ただ、ちょっと違和感を感じたのは舞台が「架空の」(ヨーロッパを想定した)世界な点。現実世界を舞台にすると史実やら風俗描写やらで総つっこみを受けるというリスクがあるのは解るのですが、経済活動をテーマにする以上、経済と地理・政治・宗教等の地域性は切っても切れない訳で、架空世界にした分その辺りの設定が甘い印象が。
ざっくりというとこの世界が所謂「中世(絶対王政)」と「近世(大航海・宗教改革以降)」のどちらを想定しているのかが読んだ限り、今一曖昧なんですよね。異端狩りやらで教会勢力が強く、宗教改革の雰囲気が全くない割に普通に香辛料(黒胡椒)があったり。まあ、大学でヨーロッパ史を専門に学んだわけではないので細かい点を挙げろと言われてもごにょごにょ・・・といった所なのですが(汗)。この辺、深く考察しているサイトや、作者本人が言及したインタビュー等があれば読んでみたいところ。
全体的な感想としては、デビュー作としてはそこそこの佳作、と言ったところでしょうか。主題の心理戦もそこまでインパクトを感じるものではありませんでした。
ただ、近日中に続けて感想をあげたいと思いますが、2,3巻は1巻より確実に面白かったです。1巻で微妙・・・と思った方も、是非続巻を読んでみる事をお勧めします。とりあえずホロはずるい(苦笑)。

*1:主人公もヒロインもそんな年齢ではないですが(苦笑)。