感想:不気味で素朴な囲われた世界

不気味で素朴な囲われた世界

不気味で素朴な囲われた世界


不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)


評価:6/10点

久々のレビュー。西尾維新の新刊。
テーマは「箱庭世界」「将棋」「メタ」。・・・っていう位、テーマ性を前面に押し出した作品でした。非常に分かり易すぎる位分かり易い。
しかし前作の「君と僕のパーソナルな関係が世界の全て」の方がテーマとしては好きでした。井の中の蛙を自覚した上で将棋の王将を気取る主人公、というのはなんとも感情移入しづらいなぁ、なんて思ってしまうのは年を取った証拠なんだろうか・・・(苦笑)。
あ、リアル中2病患者が如何に世界を変革するか(作中の言葉でいうなら「日常を異常に変えるか」)、というテーマでもいける感じが。主人公が中学1年、というのもまぁ、狙ったんだろうなぁ、と。
ミステリ的には(意外にも)それなりに西尾維新の本気をみれたんじゃないかと。ミステリ読みのミスリードを誘う手法は中々にうまいと思いました。
こういう作品もちゃんと書けるから、西尾維新は自分の中で見切れないんだよなぁ。
評価が低いのは主人公に欠片も感情移入できなかったからですが、まぁ普通に読めばもう1〜2点くらい上乗せしても良いかな、という位の評価です。このシリーズでもう何冊か書いてほしいなぁ、何て事を思いました。
「君と僕」→「メタ」の次はなんだろう?

以下完全ネタバレ。閲覧注意





前作があくまで主観的な「主人公」であろうとしたために、(客観的にはバッドエンドっぽいけど)主観的には大団円のハッピーエンドになったのとは対照的に、
今作では箱庭世界でメタ視点に立とうとした(ミステリ的には究極的には作者。いわゆる操り問題)筈が、突然現れた神の視点を持つ者によってメタメタ視点に立たれ、主人公は地に這い蹲る事になる、と。
主人公の動機が「姉が占領している2段ベッドの上の段で寝たい」というのも、=一段メタに上がりたいという欲求、ってのも分かり易い暗喩だよなぁ。
んでメタメタ言ってる奴は結局どこまで言っても上位概念を持つ者によって頭を踏まれ続けるという運命なのですな。所謂お山の大将。なんたる皮肉。
横軸のフラットな関係オンリーの「壊れた世界」と、縦軸の優越感ゲームが支配する「囲われた世界」。さてどちらが「まし」な世界なんだろうか?

きみとぼくの壊れた世界

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