バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?
評価:8/10点
錚々たる執筆者陣と帯に惹かれて思わず買ってしまいました。ジェンダー論に限らず、こういう社会学的な本は自分の専門でない割に結構買ってしまうんですよね(寧ろ専門外だから・・・かな?)。
90年代以降盛んになったジェンダーフリー運動に対し、00年代頃から保守層を中心に巻き起こっているバックラッシュ(反動)運動。本書では、そのバックラッシュ運動の愚かさ、程度の低さを嗤いながら、ジェンダーフリー運動のこれまでのあり方についても詳細に解説されています。
この本、非常に密度の濃い内容になっています。ページ数は400ページ超でしかも2段組、執筆者もジェンダーフリー運動の当事者やフェミニストだけでなく、斎藤環氏や宮台真司氏ら、非当事者も数多く執筆しており、非常にバラエティに富んだ読み応えのある本になっております。
以下感想。
まず宮台真司氏の内容から。
- 単なるジェンフリに対するバックラッシュだけでなく、普遍的なバックラッシュ論から、本田透を代表とする非モテ論などにも言及する、非常に充実した内容になっています。
- バックラッシュ運動はインテリのトップになれない亜インテリの田吾作(笑)のルサンチマンが原動力となっている、との事。そうか!それであんなにみんなバカっぽいのか!
- 格差社会にも言及。それをめぐる議論の気持ち悪さの理由がよく分かりました。ここで思い出したのが、パトレイバーの内海課長が日本人を指して「強きをけなし、弱きを笑う」という台詞。成功者を「お前だけ儲けやがって」と叩き、社会的弱者を「人の金でただ飯食いやがって」と貶す。最低の国民性ですね。
次に斎藤環氏の内容から。
- 非常にわかりやすい内容でした。しかし後半はラカン精神分析からのジェンダー論。正直敷居が高かったです。ちゃんと理解出来てなさそう・・・。ラカンも勉強したいけどそこまで手が回らないなぁ。
- 取り敢ず内田樹氏と三砂ちづる氏が寝言を吐いてるのは解りました。「素朴」な言説が(能動的にか受動的にかは別にして)政治性を帯びる、という問題は非常に面白いですね。
最後に上野千鶴子氏の内容から。
- この人はフェミニストではあるがジェンダーフリー論者ではない、と。是非は別としてフェミニスト内部の抗争が激しいようで・・・。
- 正直、誤解を恐れずに言いたい事言い過ぎだと思いました(苦笑)。別にそこでオタク系の男に喧嘩売らんでも・・・とか思ったり。
まとめ。
- 知ってるようでよく解ってなかった女性論、ジェンダー論について非常に理解が深まりました。それだけでも読む価値はあったかな、と。
- そして反動保守の皆様がいかに笑える人達であるかがよく解りました。取り敢ず「新・国民の油断」はネタとして読んでみようかな。印税払いたくないから古本で(苦笑)。
- あまりジェンダー論に興味のない人も、ネットウヨや反動保守の方々を苦々しく見ている方は是非読んでみると良いのではないでしょうか。お勧めです。