矛盾都市TOKYO

評価6/10点
川上稔の都市シリーズ。
電撃HPで連載していた物を纏めた物。


アウトラインとしては、ある事件で記憶を消去しようとした主人公が、
消していく過程で過去が順不同に浮かび上がっていく、というもの。
記憶という物は時系列順に格納されているものではなく、
関連するキーワードで数珠つなぎに連想していくものであり、
この作品も1話毎のテーマを大きなくくりとして過去の記憶が纏められています。
内容としては大半が学園生活の日常。
都市世界の日常を細かに描写したのはゲーム版OSAKA以来ではないでしょうか。


んで世界観。
舞台となる都市世界の東京は都市世界随一のトンデモ空間になってます。
流星軍*1が飛来し、西風は萌え美少女で、”Nobody”が”在る”*2
光速を越えた光は過去を写し*3、廃益まみれの東京湾には死語がうち上がり、防空壕には戦後の闇が隙間無く詰まっている。
そしてかつての僕は現在の僕に語り、現在の僕はかつての僕を越えていく。


もうこれだけでおなかいっぱいですが、
都市シリーズ共通設定の「世界を変える能力」として東京には”記動力”が設定されています。
一人一人によって異なる記動力を発動すれば、世界は文字通り改変される、と。
「思い信じて打撃すれば、エネルギー保存の法則に従い、いかなるものも打撃力を受ける」
主人公のこの記動力をもって打撃を行えば、
例えば単純に弾丸を拳で打ち落とす、といった使い方だけでなく、
闇や空気といった実体のない物や、
はては理性やラーメンのまずい部分、といった観念的なものまで殴って弾き出す事が出来ます。


長い前振りでしたが、以下感想。
まぁ、難易度の高い作品です。
世界設定自体が解りにくい上に、時系列順でないランダムな記述はかなり敷居が高いです。
内容も日常主体ということで、戦闘描写はかなりあっさり目。
ここは少し不満かな、と。
記動力はかなり戦闘でも応用の利きやすそうな設定なのでこれはもったいない感じが。
キャラクタとしては主人公は小説大阪の主人公勝意君とゲーム版主人公を足して2で割った感じ。
悩みながらも総体としてはアッパー系なのが小気味良い、とそんな感じ。
あと博士のキ○ガイっぷりが良い感じです。
全体的には後に続く世界の危機に対する序章、といった感じですな。
続きがいつ書かれるかは分りませんが、期待して待ちたい所です。
期待を込めて少々辛めの点数。


通販限定商品ですが、現在も有限会社テンキーのHPで購入することが出来るので興味のある方は是非。

*1:群に非ず

*2:There is nobody.

*3:移動体から発射された光は慣性の法則で移動体の速度分光速を越える、と。これ、現実ではありえない、と知識で分っていても感覚では解らないんですよね。