彼女が死んだ夜

彼女が死んだ夜
西澤 保彦 / 角川書店

あらすじ(文庫カバー裏より)


門限はなんと六時!超厳格教育で育てられた箱入り娘のハコちゃんこと浜口美緒。両親を説得し、やっとのことでアメリカ旅行の許可を得た。両親の目を盗んで大学の仲間が壮行会を開いてくれた出発前夜、家に帰ると部屋に見知らぬ女性の死体が!男性陣が駆けつけると、こんなトラブルに巻き込まれて旅行が中止になってしまっては、と興奮したハコちゃんは、喉にナイフを当てこういった。「この死体を捨ててきてくれなければ、わたしは死ぬゥ!」。とんだ難題の処理が大事件に発展し…。タック、タカチ、ボアン、ウサコ、キャンパス四人組が挑む第一の事件。長編本格ミステリ

何度か別の所でも紹介しているミステリ作家の西澤保彦の作品です。
紹介するのは人気シリーズの匠千暁シリーズ長編第一弾。
ミステリとしては殺人事件に対して現場の状況や報道された情報から推理を組み立てては崩し、合理的な説明に近づけていく、という形式が踏襲されています。
所謂「風が吹けば桶屋が儲かる」方式に事件の諸要素から結論を導いていくわけです。
無理のある推理もしばしば見られ、登場人物自身「これは自分の妄想だ」と推理に前置きするほど突飛な推理も出てきます。
しかしそれは論理的に飛躍しているのではなく、倫理的に飛躍しているにすぎません。
登場人物は一方ではユーモアあふれる会話を繰り広げながら、しかし、陰惨で哀しい結末に直面します。

シリーズ全体のテーマに「身勝手な親の愛情によって子供を支配することの醜さ」というのがあります。
身勝手で醜い人間を描かせたら著者は天下一品ですね。
我が身を省みたくなります。

ところでこのシリーズのもう一つの見所は登場人物の飲酒量の圧倒的な多さ、でしょうか。
主人公なんか肝臓が破裂せんばかりに毎日浴びるように飲んでます。